催眠療法には色々なテクニックがあり、催眠療法士は患者とその状況などに応じて色々なテクニックを組み合わせて施術することが求められます。
パーツセラピーもそのテクニックの一つです。
パーツセラピーとは
パーツセラピーは元々催眠療法ではなく精神療法としてワトキンズ博士夫妻によって導入されました。
特に催眠療法、心理学の解離、多重人格の専門家が使用することが多く、自我状態セラピーとも呼ばれます。
人間の精神の中には色々な性質を持った性格(自我)が存在するという考えに基づいています。精神療法としてだとグループセラピーやファミリーセラピーなどで使用されるテクニックですが、催眠療法ではグループセラピーを患者の精神の中で行うというイメージです。
人間の精神は通常一つの人格がありその中に色々な自我が存在していると最初に考えたのはフェダーン博士という精神科医で、彼の考えをワトキンズ博士夫妻が療法として開発しました。
この通常1つの人格の中にある色々な自我が独立し、それぞれが人格として1人の人間の中に存在するのが多重人格だと考えられています。
どのような症状にパーツセラピーを適用すれば良いのか
自我状態セラピーという別名が示すように、患者の中で異なる自我が反発しあっている状態、つまり何か1つの物事に対し、決定できずに悩んでいたり、悪いと思っているのに止められない癖や自分で何か改善したい、変えたいという箇所がある患者に適用することが可能です。
健康の為に甘いものを止めたいけど止められない、「~したいけど出来ない」などで悩んでいる患者等です。
なお、禁煙や薬物中毒などの症状が頭に浮かぶ方もいらっしゃるかと思いますが、たばこと薬物はその中にある中毒成分の影響が強いのでパーツセラピーの効果はあまり見込まれません。
ただ禁煙セッションの下準備としてパーツセラピーを使う事は可能です。
パーツセラピーの施術に関する注意
全ての症状に使われるものではなく、パーツセラピーを使用する場合、パーツセラピーと退行催眠両方のトレーニングをしっかり受ける必要があります。
催眠療法の第一人者のロイ・ハンター先生も仰っていますが、パーツセラピーと退行催眠は一歩間違うと患者に大きな負担をかける結果となるため、十分なトレーニングを受けてから施術しなければなりません。
リスクに関しては退行催眠同様、催眠療法のリスクに関する記述を参考にしてください。
関連ページ:催眠療法(ヒプノセラピー)のリスクと倫理
パーツセラピーの効果
催眠状態で「意識」が息をひそめている「潜在意識」の中で2つ又は3つの自我(3つ以上の場合もあり)にそれぞれの意見を述べさせ話し合わせることで全ての自我が納得する答え、すなわち患者が希望する状況を生むことができます。
今まで止めたいけど止めれなかった癖や他人に迷惑をかけるような習慣、健康に悪影響を及ぼす習慣を改善します。
全ての自我が納得するので悪習慣や癖が繰り返されることはなく、患者はストレスを感じることなく日常生活を送ることができます。
パーツセラピーのポイント
パーツセラピーを施術するにあたり、催眠療法士として必ず気を付けたい事は、パーツセラピーにおいて催眠療法士はあくまで「仲裁者」であり、中立の立場に立ち自我同士の話し合いがスムーズに行われるように最善を尽くすことです。
退行催眠同様、催眠状態で声を出して質問に答えてもらう必要があるため、シータではなくアルファ状態で施術を行います。何か誘導させるような質問は避け、それぞれの自我の言い分を十分に聞く必要があります。
慣れるまでは変な感じがするかもしれませんが、本当に2人又は複数の人と話をしているようで、催眠療法士が誰の味方をしているかとか、少しの言葉の言い回しや使う表現にも非常に敏感なので注意しましょう。
いったん一つの自我が療法士は中立な立場で話をしていないと感じると、それ以上の施術が出来ない場合がほとんどです。
なんせ、規律など精神を制御している「意識」がおとなしくしている状態での話し合いですので、何が気に障るのか、何が飛び出してくるのか本当に蓋を開けるまで分からないので細心の注意を払う必要があります。
必ず退行催眠同様、施術前に患者とよく話し合い、パーツセラピーがどのようなものなのか、伴うリスクを説明し、アブリアクションが起こった場合の準備などを済ませてから行いましょう。
症状によっては1回の話し合い(施術)で決着がつかないこともあります。
関連ページ:退行催眠とは?【目的・注意点・ポイント】