アブリアクションは退行催眠やパーツセラピーなど、病気、症状などの原因となるもの、身体的原因ではなく精神的原因を究明しそれに対処しようとした時に起こる患者の「感情の解放」を示します。必ず起こるものではありませんが、退行催眠やパーツセラピーを行う催眠療法士はアブリアクションについて把握していなければなりません。

精神的原因の究明

医療や催眠療法の効きが悪い、症状が中々改善しないという時に患者の承諾を得て、何か精神的に症状改善を妨げている精神的原因があるかどうか調べる事が出来ます。

この時に使われるのが退行催眠やパーツセラピーです。このテクニックの怖い所は患者の「意識」が気づいていない、認識していない「何か」が潜んでいるかもしれないということです。

もちろん、実際にやってみるまで催眠療法士にも何があるのか分かりません。パンドラの箱と呼んでも良いでしょう。

この精神的原因を目の当たりにした時、催眠状態下で患者はその時その場で感じた感情、感覚、全てを再び「体験」することになります。

その原因の「外傷(トラウマ)」の度合いが高い程アブリアクションの起きる確率も上がります。

患者も無意識に自分の過去にあった酷い体験の現場にいきなり投げ出される形になるのですから、アブリアクションが起こっても不思議ではありません。

どんなに小さな出来事でもアブリアクションを引き起こされる

他人から見てどんなに些細な出来事であってもその時の本人にとっては大きなトラウマです。2~3歳児にとっては親が「大きな声で叱った」ことが一生心に傷を残すトラウマとなり得るのです。

催眠療法士の心構えとして、どんなに些細な出来事であろうと、どんなに重大な出来事(恐らく犯罪になるような)であろうと、分け隔てなく落ち着いて対処する必要があります。

催眠状態下で患者が頼れるのはガイドである催眠療法士のみです。催眠療法士への信頼があって成り立っているのです。

この時に起こったアブリアクションに落ち着いて対処できるかどうかが患者の精神だけでなく身体に及ぼす影響にも関係します。

なので、退行催眠やパーツセラピーなどを実際に患者に施術する以前に、正しい指導、これらの施術及び対処法に長けている先生の元で適切な対処法を習い、十分な実践と経験を積むことが大変重要です。

アブリアクションの兆候

まず最初に気づくのは表情のわずかな変化でしょう。眉を寄せたり、険しい表情になったり、身体がびくっと反応したり、人様々です。

この時点ではまだ覚醒させる必要があるのかどうか分かりません。

私が目安にしているのは患者の呼吸です。呼吸が乱れたり、息を短く吸い込んだり、些細でも呼吸が乱れたらそこで施術は終わりです。

ひどいアブリアクションになると一瞬で呼吸困難や、脂汗をかき始めたり、身体が痙攣し始めたり、心臓発作のような症状が出ます。

催眠療法の落とし穴「突発性退行」

退行催眠をしようとしたわけでもないのに施術中の「何か」がきっかけとなって予期せずに退行してしまうことを「突発性退行」と言います。

突発性退行は大抵アブリアクションと直結しているので早急な対処が必要となります。

また、アブリアクションが起きなくても、突発性退行の兆候が出た時点で施術を一時停止し、イメージ療法は止めて暗示だけで終わらせるか、覚醒させます。突発性退行の兆候は、眉を寄せたり、険しい苦しそうな表情をしたり、呻いたり、首を振ったり、身体が怯えたように硬くなったり、些細な変化なので見逃さないように施術中は患者に常に注意を払います。

これはアブリアクションかもしれないと思ったら、通常の退行催眠やパーツセラピーと同様に、呼吸を確保し、少し落ち着いたところで適切な段階を踏んで覚醒させます。

それ以降の施術は一旦中止です。覚醒後状況を説明、何がアブリアクションを引き起こしたのかを考えます。

患者にはアブリアクションの原因となったものを将来退行催眠で処置することを望むようだったら可能とだけ伝え、決して無理強いやプレッシャーを与えないようにします。

誰もが原因の究明・解決を望んでいるわけではない

退行催眠、パーツセラピー又は突発性退行などで問題の原因が分かったとします。患者の問題解決にはこの原因を退行催眠で解決してあげるのが一番の近道だと私達催眠療法士は知っています。

しかし、全ての人がこの近道を望んでいるわけではないと心に留めておかなければなりません。

トラウマになっている経験を再体験するぐらいなら、問題解決しなくても症状だけ和らげてくれれば良いという人が殆どです。

じれったく思う時もあると思いますが催眠療法士として患者の安全、気持ちを最優先しなければなりません。

その時は患者とよく話し合い、根本的な問題解決にはならないが、症状を改善できることを説明し、退行催眠でなくイメージ療法と暗示で症状を軽減することに焦点を置いた施術をしましょう。

患者の意志を無視して退行催眠に踏み切ったとしても、患者が拒否すれば退行催眠が出来ないか最悪再びアブリアクションが起きて催眠療法士への信頼は皆無となり、この患者は2度と戻って来ないだけでなく、心に新たな傷をつけてしまうことになりかねません。

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