パーツセラピー同様、退行催眠も催眠療法のテクニックの1つですが、リスク面から考えると恐らく一番危険を伴うテクニックと言える退行催眠をご紹介します。

退行催眠とは

「退行」という言葉が示す通り、後ろへ戻る、過去へ戻るということです。

催眠状態で潜在意識を解放すれば潜在意識に存在する記憶の全てにアクセスすることが可能になります。

潜在意識が記憶を失くすということはなく、生まれてからの記憶が全て詰まっています。人によっては前世の記憶も詰まっています。

(そのため前世催眠が存在します)催眠術を使い患者の潜在意識を患者が抱える問題の原因となる出来事が起こったであろう時期と場所へと戻し、その時その場で起こった状況から問題の原因となる出来事や詳細を見つけ出し、その場で解決するというテクニックです。

退行催眠の目的

上記でも述べましたが、問題の原因となる出来事へ戻り、根っこから問題を断つことを目標とします。「原因へ退行する」とも言われます。

原因を元から断つために成功すれば1回の施術で全ての問題が解決、きれいに無くなるという劇的な効果を生むことが可能です。

色々な異なる症状が一つの原因から発生していることもあり、それらが全て消えてしまうのが退行催眠の素晴らしいところです。特に様々な恐怖症に大きな効果を表します。

また、PTSDなど心に大きな傷、悲しみなどを抱える場合にも効果的です。

心の傷は身体的な症状に現れることがあり、通常医療であまり効果が見られない身体的な病気でも、心の傷を治したら身体的病気も治ったという例も少なくありません。

退行催眠の注意点・ポイント

危険を伴うテクニックの為、必ず十分なトレーニングを受けた上で施術しましょう。

これはパーツセラピー同様、催眠療法の第一人者であるロイ・ハンター先生も口を酸っぱくして仰っています。

リスクについては催眠療法のリスクに関する記述を参考にしてください。

関連ページ:催眠療法(ヒプノセラピー)のリスクと倫理

必ず、退行催眠の利点、それに伴うリスクを患者に話し、退行催眠を行うかどうかをよく話し合って決めなければなりません。

またアブリアクションが起きた時の準備、対処も完璧にしておくことが大切です。

退行催眠中は潜在意識にある記憶の中にいるため、特定の事柄、人物、キーワードなどへ誘導したり「それは~ではないですか?」など患者の口から出ていない言葉や最初から記憶にない物事や言葉を発してはいけません。

これはその言葉をその時点での記憶に植えつけることになり、記憶の書き換えが行われてしまうからです。

潜在意識には善悪の区別がないため、どれが本当に体験した記憶でどれが後から植えつけられた記憶なのかが分からなくなってしまいます。

過去の特定時点へ退行させるには出来るだけ深い催眠状態にあるのが好ましいので時間をかけてシータレベルまで誘導しましょう。

実際に退行してからは本人の口から状況などを話してもらわないといけないので、自然とアルファまで覚醒しますが、施術には影響はありません。

実際に退行し、施術を続ける場合、「意識」の覚醒を防ぐため、施術の合間に催眠誘導を行う事が大切です。

退行催眠はパーツセラピー同様、ふたを開けてみないと何が飛び出すか分からないので、数分で終わることもあれば1時間半以上かかることもあります。

患者をトラウマとなる状況に置き去りにしたままセッションを終えることは出来ないので、時間に余裕を見てスケジュールを組むことが大切です。

また、アブリアクションが最も起こりやすいのが退行催眠なのでどんな小さなサインも見逃さないように注意します。

アブリアクションが始まったら、「もう少しぐらい大丈夫かな」と思い続行するのではなく、まず正しい呼吸を確保し呼吸が落ち着いたところで催眠術から覚醒させます。

精神的身体的にも負担が大きい可能性の高いテクニックですので無理は禁物です。

無事にアブリアクションも起きず、問題解決したり、トラウマとなる場面に遭遇しても不の感情がわか無くなれば施術は成功です。

ですが、精神的に負担の重い施術ですので、覚醒させる前に必ずリラックスさせ、心を穏やかにさせる暗示やテクニックを使ってから覚醒させましょう。

関連ページ:パーツセラピーとは?効果やポイントについて

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