思い込みの恐怖~催眠と洗脳の違い~

「催眠」とよく混同される言葉として、「洗脳」があります。

ウィキペディアで言葉を調べてみると・・・

「催眠」=暗示を受けやすい変性意識状態のひとつ

「洗脳」=強制力を用いて、ある人の思想や主義を、根本的に変えさせること

ということです。

言葉だけでは違いがわかりづらく難しいとは思います。

中には似たイメージを持っていて、同じものと思われている方もいるのではないでしょうか?

催眠術師はこの違いをはっきりと理解しているのですが、一般に浸透はしていないように思われます。

しかし全く似て非なるものです。

催眠と洗脳の違いは?

この二つには最も大きな違いがあります。

言葉のとおり、催眠は暗示によるものですが、洗脳は強制力を用いるということです。

催眠は基本的に強制力を用いません。催眠は同意が必要なのです。

催眠は催眠術師が被験者に催眠をかけるものです。

しかし催眠導入を行う前に、いろいろと話をしてお互いの心を理解し合う必要があります。

「ラポール」といいます。

この「ラポール」という行為が催眠では重要なポイントになります。

「ラポール」がうまくいかなかった場合、催眠の成功率はかなり低くなります。

なぜかというと、催眠には強制力というものが働きません。

催眠は暗示や光などの刺激により導入します。

この段階で催眠術師の暗示を受け入れる気がない被験者は拒否します。

「かからないぞ」という意識を持っていればほぼかかりません。

そして無意識の部分が拒否すれば、催眠にかかる気があってもかかりません。

催眠は基本的に暗示を受け入れる側、すなわち被験者の気持ちが大きいのです。

もちろん催眠術師の腕も必要になる部分はあります。

しかし導入部分は術師の腕よりも、お互いの心象、相性の方が影響は大きいです。

術師の声質や抑揚、言葉自体が無意識下で受け入れられるかが大事です。

他にも見た目や匂いも影響します。

人によって好みやNG項目は違いますので、完璧なことはありえません。

しかし催眠術師はできるだけ気をつけて行動しているはずです。

そして当然、催眠を解くとすぐに普通の状態に戻ります。

術師は最後にしっかりと催眠を解く(抜くともいいます)のは最低限のマナーです。

ただ、万が一に省略したとしても、たいてい翌日には効果はなくなっています。

持続性もなく、強制力もはたらくことはほぼありません。

ほぼという言い方は、被験者が催眠を好きすぎて自ら戻りたくないという依存をしていなければということです。

たとえば嫌いだと思っていた食べ物を催眠状態で食べてみました。

その後、催眠を解いた後も「何故だか毛嫌いせずに食べられた」と思うようになることなどです。

自分で理解した上で、良い意味で催眠に依存したということになります。

あくまで自分の意思が都合よく大きく左右します。

一方洗脳というものは強制力が必要です。

どういうことかというと、催眠と違い逃げられない状況にさせられていることがほとんどです。

長時間かけて洗脳していくことは、環境さえ整えば容易です。

たとえば監禁を強いて、身動きをとらせない、食事を与えない、目隠しをする、トイレに行かせない。

このような人間的な生活を認めず、恐怖を与え続けるのです。

そして極限状態にて要求を受け入れれば希望や褒美を与えるということをするのです。

おそらく1ヶ月もすれば意思も判断力も薄弱となり、体力も弱っていく。

そこで洗脳を施すことによって成功するのです。

薬を用いることで洗脳することも可能です。

戦争が盛んだった頃、ありとあらゆる手段を用い洗脳・廃人化していた歴史があります。

意思そのものの人間レベルが変わってしまっている場合が大きいので、解除は困難です。

長い時間と大きな労力が必要になってきます。

薬などの効果で戻ることができない場合もあります。

これがいわゆるマインドコントロール(MC)です。

しかし今のこの日本という国の中で、法的な問題でクリアできることは皆無と言って良いでしょう。

環境さえ整えばとしましたが、逮捕を覚悟しない限り不可能に近い行為です。

催眠に関する誤解

催眠を施すときに一部の方が心配することは、「催眠」と「洗脳」とのイメージが近い点です。

「おかしくなってしまうんじゃないか?」という不安です。

確かに一時的におかしな行動をとることはあります。

例えば目の前の人の顔を見ただけで可笑しくて笑ってしまうなどです。

しかし催眠状態でも本能の部分でストップがかかっているので、自分のなかの絶対なNG行為はしません。

どこかで、「そういう自分があってもいいかも・・・」という自分がいるはずです。

NG行為の多い人、強い意志をもって抵抗する人はそもそも催眠術にはかかりません。

そして自殺願望が相当強い人でない限り、「窓から飛び降りたくなる」暗示で飛び降りることはありません。

催眠は自らの意思によるものが大きいので安心してください。

そして最悪の場合、自ら拒否できるものだと思ってください。

自己催眠と洗脳

自己催眠に関しても、自分で考え自分の意思が大きく働いて実現していきます。

しかし洗脳の場合は相手に思い込まされて、自分も思い込むように仕向けられていくのです。

時間をかけて確実に思い込まされ、それを自分で噛み砕いて理解したときが大変なのです。

洗脳完了ということになります。

他人の意見を一切聞かなくなってしまったときが、大変な道に向かってしまうということです。

周りの方にいませんか?

今の時代、次のような人は洗脳されやすいということを覚えておいてください。

「誰からも受け入れてもらえなくなった人は洗脳されやすい」

孤立し人生の岐路に立たされたとき、話を聞いてくれる人を信じてしまうものです。

その人が神様に見えてしまったとき、ほぼ盲目状態になります。

社会に追いつめられている時分に、振り返って考える余裕などあるでしょうか?

本当に神様のような人がおもてなしの国、日本では多いと思います。

しかし悪意ある人に心の隙をつかれたときに、不覚にも洗脳されてしまうのです。

それだけは気をつけてください。